実際のユーザー行動を見ると崩れ去る、6つのウェブサイト神話(和訳+α)

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はい、ごめんください。Microsoft Clarity(クラリティ)大好きコスギです。
この記事は Ryan Loftus さんによって書かれた Microsoft 社の公式記事を和訳しつつ、私の考えなども入れたものです。ノイズなく読みたい方は以下からどうぞ。

Understand your customers | Micr...
6 Website Myths Exposed by Real User Behavior - Understand your customers | Microsoft Clarity Blog See how real users navigate, scroll, read, and convert—and why common website assumptions break down when you watch real behavior.
目次

実際のユーザー行動を見ると崩れ去る、6つのウェブサイト神話

デジタルマーケティングは、すでに約30年の歴史があります。その中で、「マーケティングやWebサイトはこうあるべき」「ユーザーはこう行動するはずだ」という、強く信じられてきた考え方が数多く生まれてきました。

公平を期すなら、それらの多くは一定の真実に基づいています。たとえば、「説明的なCTA(コール・トゥ・アクション)」が「詳しくはこちら」のような曖昧な表現よりも優れたユーザー体験を提供すること。明確な価値提案が重要であること。そして、表示速度の速いサイトほどコンバージョン率が高い傾向にあること。

しかし、広く受け入れられている考え方すべてが、精査に耐えうるわけではありません。では、「本当に正しいもの」と「単に慣れ親しんだ思い込み」を、どうやって見分ければよいのでしょうか。

そこで登場するのが 行動分析(Behavior Analytics) です。

行動分析は、集計された数値や社内の意見だけに頼るのではなく、実際の人が、あなたのサイトで何をしているのかを観察することを可能にします。どこで迷い、何を無視し、どのように摩擦を回避しようとするのか。

そして、実際のユーザーが実際のWebサイトを使う様子を見ていると、非常に一般的な前提が、次々と崩れていきます。

コスギ注

Microsoft Clarity は行動分析ツールですからね。

「一定の真実」については、ベイジさんの記事でキッチリまとめられているので、こちらも基本知識として知っておくに越したことはありません。上記は型破りの話であって、型無しの話ではないので。

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行動分析のための基本チェックポイント

  • サイト全体や各ページの目的は?
  • グローバルナビの配置の理由は?
  • ユーザー動線の想定は?

行動分析には、訪問者がどんなページを見て、どんな行動をするかの仮説があるほうが効果的です。たとえばこの記事のように「公式記事の和訳として内容を期待する」「著者の意見が気になってアコーディオンを開く」程度から始めても大丈夫。ここで「著者の意見が気になる」まで進んだ人は中の人への興味が出ているので、Microsoft Clarity の見方もコメントしておくと「なるほど」と納得感につながる=価値を感じられると想定されます。

神話1:私たちのナビゲーションはわかりやすい

なぜそう思ってしまうのか

多くのチームは、自分たちのナビゲーションはわかりやすいと信じています。なぜなら、内部的には意味が通っているからです。ラベルは明確に感じられ、構造も論理的に見えます。関係者の間では「よく整理されている」という認識で一致していることが多いでしょう。チームの誰もが目的の情報を見つけられるのであれば、ユーザーも同じようにできるはずだ、と考えてしまいます。

実際のユーザーはどうしているか

しかし、セッションレコーディングを見ると、まったく違う様子が見えてきます。ユーザーは複数のメニュー項目の上を行き来し、あるページをクリックしては、すぐに戻るボタンを押し、別の選択肢を試します。中には、ナビゲーション全体を無視するユーザーもいます。また、「正しい使い方」でナビゲートすることをやめ、スクロールしたり、検索を使ったりする人も少なくありません。

私が関わったあるプロジェクトでは、およそ30%のユーザーがナビゲーションに問題を抱えていることがわかりました。彼らはページを開いては「違う」と感じて戻り、それを何度も繰り返した末に、必要な情報を見つけるか、あきらめるかのどちらかに至っていました。

実務で意味すること

内部でのわかりやすさと、外部でのわかりやすさは同じではありません。チームは製品や用語、構造を知りすぎているため、初めて訪れるユーザーと同じ視点でサイトを体験することができません。ナビゲーションのわかりやすさは、前提として信じるものではなく、観察によって確認されるべきものなのです。

コスギ注

この話、「関心動線」と通じるんですよね。

私が関わらせていただいているウェブサイトで、力を入れ始めた関連サービスのページがないから、新しく作る提案をしようと思っていたんです。そしたら「コスギさん、それもうあるし、グローバルナビから行けます……」と言われ、横転。

そんな場所にあるのに、アクセス数は全体の0.1%未満……なぜなら、流入のほとんどが広告経由、つまりサイトに流入する目的が限られていたことが大きかったんです。主要なページの動線は太かったし、そこを回遊する改善もできていたからこそ、少しズレた関連サービスへの動線に(途中からとはいえ1年以上関わっている私ですら)気づかなかったほど……CVRより低いなんて。

関連サービスは現在のユーザーと直接関わるものではないからこそ、「太い動線から回遊の道を作ればいいじゃない」と安易にできるものでもないので、現在のビジネスモデルから引き直しているところです。仮説検証真っ只中。

ナビゲーションがわかりやすいかどうか?の基本チェックポイント

Microsoft Clarity:グローバルメニューのクリックマップの例
トップページで使われることが多いです
  • グローバルメニューのページごとに確認
    • そもそも使われているかどうか、セッション数やユーザー数を確認
    • 使用を想定しているページのクリック(タップ)ヒートマップを確認
    • そのページを起点として、前後のページを確認
  • サブメニューも同様に確認
    • 特にモバイルで、タップしないと出てこないメニューは使われにくい
    • ただ並べているだけでアクセスされないのであれば、必要な下層ページからの動線がない可能性も

なお、特定のページは主に関係者が使っていることもあります。それ自体に問題はありませんが、サイトの目的の検証のために影響を考慮・対処しておく必要はありますよね。

神話2:もう誰も文章なんて読まない

なぜそう思ってしまうのか

私たちは日常的に、「注意力は短くなっている」「ユーザーは流し読みしかしない」といった話を耳にします。そのため、長文コンテンツは価値がなく、短いほうが常に良いのだと考えてしまいがちです。

実際のユーザーはどうしているのか

ユーザーはすべてを読むわけではありませんが、自分にとって関係があり、信頼でき、理解しやすいと感じた内容はきちんと読みます。

ユーザーはスクロールし、立ち止まり、自分の疑問に答えてくれるセクションに時間を使います。構成が整理された長文コンテンツは、今でも非常に高い成果を出しています。実際、平均読了時間が8〜10分に達する長文記事も数多く存在します。

もう一つ、ユーザーが読むかどうかに大きく影響する重要な要素があります。それが「可読性」です。500語にも及ぶ長い段落を目にして、「これは読む気がしない」と感じた経験はないでしょうか。ユーザーも同じです。

短い段落、狭めのコンテンツ幅、目次のような機能は、ページ滞在時間に大きな影響を与えます。こうした工夫があることで、ユーザーは必要なセクションを素早く見つけ、そこに深く関与することができます。

実務における意味

問題は文章の長さではありません。有用性です。ユーザーが避けているのは「読むこと」ではなく、「関係がなく、情報密度の低いコンテンツ」です。価値があり、理解しやすいと感じられる情報であれば、ユーザーは時間を割いて向き合います。

コスギ注

「最近、AI 生成の文章が増えているよな〜」と思いながら読んだセクションです。笑って読んでいたんですが、だんだん真顔になりました。

AI は平均的な出力をするので、とても無難なんですよね。わかりやすいですが、それだけ。

「平均的に出力されたものに価値はない」と断言することはできませんが、スマホネイティブの子どもたちが動画で情報を仕入れているのを目の当たりにしていると、少なくとも AI ネイティブの時代は来るはずで、それまでに提供価値に向き合う必要があるのだろうなって。「価値」って、人間にしか出せない「異常値」であり、「約束された変化量」だと思うのです。だから、これからは今よりもっと、経験を積んできた人の言葉が貴重になります。

これまで私はわかりやすさを重視してきましたが、それだけじゃダメなんだよなと薄々感じていたところに、「アクセス数の継続的でゆるやかな減少」「典型的なヒートマップへの変化(今までアテンションの強かった部分が薄まってファーストビューで終わりつつある)」という事実を突きつけられています。

確かにまだ終わってはいませんが、想定される未来のためには、今のうちに向き合うしかないですね……。

文章が読まれているか?の基本チェックポイント

Microsoft Clarity:アテンションマップの例
アテンションマップでページの下部が赤い場合
  • 記事の目次のクリック(タップ)ヒートマップを確認
    • 長い記事は目次から注目箇所がわかる場合も多いです
    • 部分的に読まれているなら、そのセクションからの動線も検討できます
  • スクロールマップとアテンションマップも確認
    • そのページに価値を感じている箇所がわかります
    • 目次が長すぎると離脱されるケースも少なくありません

長いから読まれないのか、価値が伝わる前に離脱しているのかを見極めるところから。

神話3:ファーストビューがすべて

なぜそう思ってしまうのか

この考え方は、理解しやすい前提から生まれています。ユーザーがすぐに目にしないものは、存在しないのと同じだと感じてしまうからです。そして、これまで述べてきたように、注意力は短くなっていると言われています。

実際のユーザーはどうしているのか

データは一貫して、ユーザーがスクロールしていることを示しています。しかも多くの場合、ページに到達してから数秒以内にスクロールが始まります。

重要な文脈、裏付けとなる情報、意思決定に必要な材料は、ファーストビューよりもはるか下に配置されていることが多く、ユーザーはそれらを積極的に探しにいきます。

実務における意味

この神話が本当に破綻するのは、チームがページ上部だけを最適化し、実際にユーザーを納得させている下部のコンテンツを軽視してしまうときです。どちらも重要ですが、その役割は異なります。

ファーストビューは期待値を設定し、ファーストビュー以下のコンテンツが信頼を獲得します。ページが失敗するのは、ファーストビューをスタート地点ではなく、ゴールとして扱ってしまったときです。

コスギ注

ファーストビューが、ゴールではなくスタートというのは、本当にそう。

なんですが、神話というほど強固な偏見かな?と思うくらいには、私のまわりで「ファーストビューだけやっていればいい!!!」という人を見たことがありません。

なんなら、まだファーストビューを軽視している人のほうが多いくらいの印象です。スタートにすらなっていないというか。トップページのファーストビューで、自己満足で抽象的な「わかるようでわからないスライドショー」を掲載しているサイトは山ほどあるし、それを疑問に思わない制作者もたくさんいるんじゃないでしょうか。はいブーメランブーメラン

これは、評価基準が明確でないことにも起因していると思います。ファーストビューで、注視やクリック(タップ)を生み出せないか、もう少し考えてみてもいいかもしれませんね。そういう仮説のある施策なら、検証も捗りますよ。

ちなみに、マーキーでヘッダーに出したキャンペーンのお知らせは、ファーストビュー改善施策の中でも一番スベったことを報告しておきます。みんなスクロールしたいんだきっと。

ファーストビューが機能しているか?の基本チェックポイント

Microsoft Clarity:スクロールマップの例
ファーストビューの赤から急に色が変化する場合
  • そもそもスクロールされているかを確認
    • スクロールマップとアテンションマップでユーザーの停止箇所をチェック
    • スクロールされていなければ、直帰しているかグローバルナビで移動しているかのどちらか
  • ファーストビューにおける行動を確認
    • クリックかスクロールか、それ以外の何かがあるか?
    • それは想定している行動か?

ファーストビューは期待をつくる箇所なので、ページの目的ごと(トップ/ページ/記事/フォームなど)に仮説検証してみると見えてくるものがありますよ。

神話4:自分にとって速い=みんなにとっても速い

なぜそう思ってしまうのか

自分のノートパソコンでページが素早く読み込まれれば、それが「誰にとっても速い」と考えてしまうのは自然なことです。

実際のユーザー体験

Webサイトのパフォーマンスは、使用しているデバイス、ネットワーク環境、所在地、そして訪問者が新規かリピーターかによって大きく異なります。キャッシュの影響により、社内のメンバーには高速に感じられるサイトでも、初めて訪れたユーザーには大きな遅延が発生していることがあります。

もう一つ重要な要素があります。検索エンジン(そしておそらくAIプラットフォームも)はモバイルファースト・インデックスを使用しています。つまり、検索エンジンはモバイル版サイトを基準に評価を行い、デスクトップ版サイトは見ていないということです。そして多くの場合、モバイルのパフォーマンススコアは、デスクトップよりも低くなります。デスクトップでは高速に表示されるサイトでも、モバイルではそうとは限りません。

実務で意味すること

一人の体験が、全体を代表することはありません。ユーザーが実際にどのようにサイトを体験しているかを理解するには、すべてのデバイスにおけるパフォーマンスを測定する必要があります。

Google Lighthouse のようなツールは有用ですが、スコアは一度に1条件ずつ生成され、結果が大きく変動することもあります。その点で、Microsoft Clarity のダッシュボードにある「パフォーマンス概要カード」は有用です。これは、サイトやページにおけるすべてのセッションを集計したパフォーマンススコアを表示します。

コスギ注

サイトのパフォーマンスを測るための、コアウェブバイタルの主な指標は3つあります。

LCP(Largest Contentful Paint):ページ内で最も大きなコンテンツが表示されるまでの時間のこと。ページの読み込み速度に直結し、2.5秒が良好とされています。

INP(Interaction to Next Paint):ユーザーのクリックなどから、ブラウザが応答して表示するまでの遅延時間のこと。ページ内の応答性に直結し、0.2秒(200ミリ秒)が良好とされています。

CLS(Cumulative Layout Shift):ページ読み込み中に要素がズレる度合いのこと。クリックしようと思ったらあとからバナーが出てきて、それをクリックしてしまった、みたいなことがないかどうかの指標です。0.1未満が良好とされています。

こういった指標に改善が必要な場合、チリツモでユーザーに負荷をかけてしまいます。

価値を知っている人にとってはなんとも思わないかもしれませんが、それほど期待していないユーザーは、1秒で「縁がなかった」とみなしかねません。改めて考えたらすごい時代ですね。

本当に速いのか?の基本チェックポイント

Microsoft Clarity:パフォーマンススコアの例
赤い部分をクリックすると簡単に絞り込めます
  • 30日間のパフォーマンススコアを確認
    • パフォーマンススコアの赤い部分(スコア 1〜50)だけで絞り込める
    • どんな状況で置きていたのかをレコーディングなどで確認
    • 極端にユーザー数が少ない場合は、その環境で起きているだけの場合もある
  • イライラしたクリックを確認
    • 表示が遅いと何度もクリック(タップ)しがち
    • 速度以前に、そもそも期待した反応を用意できていない場合もある

「速く表示されること」は、スムーズに行動してもらうための要因のひとつでしかないので、速さそのものが神話になりかけているかもしれませんね。

神話5:私たちはユーザーでもあるから、ユーザーを理解している

なぜそう思ってしまうのか

社内の人間は、一日中そのサイトを使っています。製品を使い、導線を把握し、全体の流れを理解しています。そのため、それがユーザー行動を理解していることと同義だと感じてしまいます。

実際のユーザーはどうしているのか

このブログを読んでいるあなたは、おそらく多くの人とは違う形でWebサイトを使っています。一般的なユーザーよりも忍耐強く、目的意識が高く、デジタルの操作にも慣れています。

さらに、あなたにはそのサイトを理解する金銭的な動機もあります。

しかし、実際のユーザーにはその動機がありません。彼らは、あなたと同じ文脈や語彙、摩擦への耐性を共有していません。次に何が起こる「はず」なのかも知りませんし、それを待ってくれることもありません。

実務における意味

慣れは、盲点を生みます。製品やサイトをよく知れば知るほど、初めて訪れたユーザーの視点で見ることは難しくなります。セッションレコーディングを見たり、ヒートマップを分析したりすることで、社内テストではほとんど見落とされてしまうギャップが明らかになります。

コスギ注

これはねえ……特にモバイルのヒートマップがわかりやすいですが、下層ページなのに一番クリック(タップ)されているところが「ハンバーガーメニュー」ってケースがたまにあります。広告流入の場合は特に。

もちろん、ページ内のクリック要素にもよりますが、「アテンションマップがファーストビューに集中している」+「ハンバーガーメニューが一番タップされている」ときのユーザーの頭の中は、混乱しています。

ページに来たけれども、期待した内容ではないためにグローバルメニューを見て、それっぽいところを探しているわけですね。当然、このメニューになければ離脱します。

直帰せずに期待してくれているだけ、まだ大きな可能性があるので、ランディング直前の状況にフィットさせましょう。場合によってはランディング前(広告のクリエイティブとか)の調整が必要になることもありますよね。

思い込みがどれくらいあるか?の基本チェックポイント

Microsoft Clarity:レコーディング画面の例
テキストを選択しながら読んでいることがわかります
  • デッドクリックやイライラしたクリックを確認
    • 「そこクリックする!?」と思うところや、リンク切れを発見できる
    • そもそも連打を想定していない行動を発見できる
  • 「クイックバック」と「一度で完了」で絞り込んでレコーディングを確認
    • ページの滞在時間が極端に少ないケースを確認できる(悪いことだけではない)
    • レコーディングは「詳細」から特定のイベントを絞り込める

他にも、404ページにアクセスした際の挙動をわかるようにしておくと、致命的な想定外をカバーしやすいですね。

神話6:大きな成果には、大きな変更が必要

なぜそう思ってしまうのか

意味のある成果を出すには、大規模なリニューアルや大きな刷新、あるいはまったく新しいユーザージャーニーが必要だと感じてしまいがちです。実際、公平を期すなら、それが当てはまる場合もあります。大規模なWebサイトの再設計や、長期的なパフォーマンス改善への投資が、大きな成果をもたらすことも確かにあります。

しかし、それが常に必要というわけではありません。

実際に起きていること

行動分析が明らかにするのは、小さな混乱点が、過度に大きな問題を引き起こしているという事実です。そうした特定の瞬間を修正するだけで、劇的な成果につながることがあります。

たとえば、ある Clarity の顧客は、クライアントの支援において、コンバージョン数ゼロの状態から40件の新規相談予約を獲得し、同時にデッドクリック率を9.5%から0.5%まで低下させました。しかも、サイト全体を再設計したわけではありません。行動分析によって問題点を特定し、1つの新しいランディングページを設計しただけでした。その効果は即座に、かつ明確に表れました。

実務における意味

規模よりも、精度です。最大の改善は、多くの場合、ユーザー行動に基づいたデータから導かれる、焦点を絞った変更によって生まれます。

コスギ注

色々改善ポイントが見えてくると、「これはリニューアルしたほうが早いな……」と思うこともあるかもしれません。ですが、その費用を持つのはクライアントなので、投資対効果が見えないと「表示されているんだから問題ないのでは?」と判断されますよね。

この見極めができるかどうかが、AIではなくずっと関わってきた人間ができることなのかな、とも。施策としては記事にあるとおり、LPを1枚つくるだけでも成果につながることは少なくありませんが、責任を持って決断するのは誰かって話だと理解しました。

これは Microsoft Clarity を見ているだけじゃわからない、どんな Why を自分が持っているのか、という問いです。

結論

多くのWebサイトに関する神話が残り続けているのは、それらがもっともらしく、安全に感じられるからです。こうした考え方は、不確実性を減らし、意思決定を容易にしてくれるという意味で、ある種の安心感を与えてくれます。

しかし、セッションレコーディングを実際に見ていると、どれほど自信を持っていた前提であっても、簡単に揺さぶられることがあります。そして、実際の行動を観察し始めると、ユーザーのニーズに本当に応えるための、データに基づいた意思決定が、はるかに行いやすくなります。

Microsoft Clarity でわかる「見たくない現実」

Clarity を使い始めると、誰もが一度は「これは正直、見たくなかったな……」と感じる瞬間があると思います。

私の場合、それはクライアントに提案してゴーサインをもらった施策がスベったときでした。自分のサイトなら自己責任で済みますが、クライアントワークではそうはいきません。目的をしっかり共有し、説明責任を果たさなければ、改善提案はおろか、改善施策を継続することすらできなくなります。

もうひとつ頭を抱えたのは、「この業種のユーザーは文章を(マジで)読まない」という現実を突きつけられたときです。オペレーションの負荷軽減を目的に、わかりやすく説明したページを作り、イラストや図解も入れたものの、誤解を防ごうとして文章が増え、結局読まれない……そんなドツボにハマったこともありました。もちろん、読む人は読むので無駄ではなかったのですが、考え方を根本から変えざるを得ませんでした。

それでも私は、Clarity が大好きです。もっと使ってほしい。

ウェブ制作会社が Clarity を使えば、提案の糸口になります。しかし、わかりやすい分だけ、常に費用対効果を求められる道を選ぶことでもあります。ツール自体に費用はかからないので導入はしやすいですが、意外と茨の道ですよ。

まず、Clarity で問題を発見したからといって、簡単に効果が出るとは期待しないほうがいい。そもそものビジネスモデルから考えなければ改善できないことも多いですし、定量データを見ずに定性データだけで改善できることのインパクトなんて、たかが知れています。少なくとも、中小企業がそんなことにお金を出すわけがありません。

むしろ大切なのは、しっかりと目的と目標を設定し、「本気で改善してくれようとしているんだ」という信頼を得て、責任を共にしていけるかどうか。個人的には、Clarity を通してユーザーを、クライアントの大事な顧客を、一緒に見つめる制作会社が増えてほしいと思っています。

AI時代、「これがいい」より「これでいい」と選ばれかねない時代です。せっかくなら私たちも、「一緒にやるならあなた方がいい」と選ばれたいじゃないですか。

Microsoft Clarity は、そういうものを見せてくれるツールだと思っています。

実際のユーザー行動を見ると崩れ去る、6つのウェブサイト神話(和訳+α)

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この記事を書いた人

はい、ごめんください(/・ω・)/
WordPressをメインとした制作、開発、ウェブコンサルと、ストレングスファインダーを活用したコーチングを行っています。このブログでは、ユーザーの行動分析をモリモリできる Microsoft Clarity(クラリティ)を研究した備忘録としています。解析のお仕事は中小企業向けにご提供しています。

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