はい、ごめんください。Microsoft Clarity(クラリティ)大好きコスギです。
Clarity を導入後、大切な初期設定のひとつとして、自分や担当者を解析のデータに含めないために関係者除外があります。すぐにできる簡単な方法と、しっかりとした方法と、ひねり出した折衷案をまとめました。
結論からいうと、①接続しているIPをブロックするか、②ログインしている管理者を判別して Clarity を実行させないか、③Cookie とカスタムタグで関係者を判別するか、④utmパラメータを使うかのどれかです。どれも一長一短があります。
接続しているIPをブロックする
Clarity 側で用意されている機能です。シンプルでカンタンですが……メリットとデメリットはこんなかんじ。
メリット
- カンタンに自分や自社を除外できる
- 除外したいIPをいくつも設定できる
- 接続元をサクッと登録できる
デメリット
- IPアドレスが変わったら再設定が必要
- リモートワークの社員全員に適用させるのは非現実的
- 社内のアクセスすべてに適用されてしまう
「設定」画面の左にあるメニューから「IP ブロック」に進むと、除外したいIPが設定されてなければ以下のような画面が表示されます。
ここで、[+ IP アドレスをブロックする]をクリックします。
以下のような画面が開き、名前(日本語でもOK)を入力して「現在の IP をブロックする」にチェックを入れると、自動的にIPアドレスが入力されるため、[追加]ボタンで完了させます。
はい、めちゃくちゃカンタンですね。
ただし、中規模以上の企業などグローバルIPアドレスを取得していないケースのほうがほとんどだと思うので、いつの間にかIPアドレスが変わっていることはありえます。実際、この記事を書いている時点で自宅のIPアドレスが変わっていましたし。
ちゃんと関係者を除外したデータを取得したいなら、Google タグマネージャーを使うのが一番です。
ログインしている管理者を判別して Clarity を実行させない
Clarity は一度実行されると必ずデータを取得するため、Google タグマネージャーで Clarity を制御して、管理者は Clarity を実行させないようにするのが、この方法です。
今回は、WordPress のようなCMSにログインしているケースを想定しています。
メリット
- WordPress にログインできる人を一気に除外できる
- スマートフォンからのアクセスにも対応できる
- 不要なデータを含めなくて済む
デメリット
- 管理者ログインを見極める必要がある
- Google タグマネージャーで JavaScript を使用するので誰でも簡単に設定できるわけではない
ログインしているユーザー全員を関係者として除外するには、WordPress なら#wpadminbar
の有無で判別できます。これを Google タグマネージャー(以下、GTM)で取得し、例外トリガーとして利用できます。
カスタム JavaScript で変数を新規追加
管理バーのID #wpadminbar
の有無を JavaScript で取得し、ユーザー定義変数 is_user_logged_in
を追加します。
function() {
return document.querySelector('#wpadminbar') !== null;
}
返り値は true / false のシンプルな boolean 型です。
もし、ログインユーザー全員ではなく、管理者や編集者など一部の権限を除外したい場合は、JavaScript とトリガーの条件を調整してください。
トリガーを新規追加
STEP1で設定したユーザー定義変数 is_user_logged_in
= true
の条件をトリガーとして新規追加します。
Microsoft Clarity 公式タグで例外を設定
Microsoft Clarity は、この Official(公式)タグを使用することでインストールできます。配信トリガーに「All Pages」を設定することが一般的(GTMをインストールしたすべてのページで実行させる)なので、ここに「例外」として、STEP2で作成したトリガー「WordPress ログイン中なら」を追加します。
これによって、ログインしている管理者ユーザーのアクセスは取得しません。
スマートフォンからもログインしておけば除外されるようになりますし、他のアクセス解析ツールでも使える方法なので、変数を調整してトリガーをつくっておくと便利です。
上記はそもそも取得しない方法ですが、以下はあえて取得してから判別する方法です。
Cookie とカスタムタグで関係者を判別する
関係者を Cookie で判別して、Clarity のカスタムタグでフィルタリングして除外するのが、この方法です。
メリット
- システムにログインしなくても対象にできる
- ユーザーグループを設定できる
- スマートフォンからのアクセスにも対応できる
デメリット
- 必要な仕様を把握して設定・管理できる上級者向け
- 他の方法よりやや工数がかかる
- 関係者に周知して依頼する必要がある
GTMを使う前提での設計ポイントは、以下の3つ。
- 同じドメイン内で Cookie を発行するPHPを置く
- GTMで、Cookie の情報を取得する変数を作成
- GTMで、取得した Cookie の情報をカスタムタグとして Clarity に送る
Clarity でカスタムデータを取得する際にはカスタムタグを使用する方法がベストです。
Cookie を発行するPHPファイルをFTPでアップロードして、アクセスすると、ファーストパーティ Cookie が発行されます。
Cookie 発行用のPHPコード
ChatGPT に作ってもらったものなので、著作権はありません。適宜変更して使ってください。なお、mogmog が関係者の判別用として Clarity に送信されるため、必要に応じて適切な名前を設定してください。
<?php
// Cookie の有効期限を1年間に設定(60秒 * 60分 * 24時間 * 365日 = 1年)
$expiryTime = time() + (60 * 60 * 24 * 365);
// Cookieを設定(名前: cookie_monster, 値: ユーザーの初回訪問日時)
setcookie('cookie_monster', 'mogmog', $expiryTime, "/");
// Cookieが存在するか確認し、メッセージを表示
if(isset($_COOKIE['cookie_monster'])) {
echo "Looks like you've met the Cookie Monster before! 🍪";
} else {
echo "First time meeting the Cookie Monster, huh? 🍪 Welcome!";
}
Cookie が発行されたら、その情報をGTMで取得します。STEP1 で作成したファーストパーティ Cookie を取得する変数で「cookie_monster」を新規に作成しましょう。
STEP2 で取得した情報をカスタムタグ「stakeholders」として Clarity に送るため、GTMのカスタムHTMLタグを作成します。トリガーは「All Pages」にしてあります。
<script>
window.clarity("set", "stakeholders", "{{cookie_monster}}");
</script>
GTM で Microsoft Clarity (official) を使っているなら
以下のように、カスタムタグをサクッと送信することができます。
ページタイトルとコンテンツグループも、変数で設定しておけばこのとおり。
以下のように、プレビューの変数でファーストパーティ Cookie の中身が確認できれば準備完了です。
PCやスマホから Cookie を発行するページにアクセスし、Cookie が発行できていれば stakeholders
に値が入っていることを確認できます。
Clarity のフィルターで選べるようになれば、抽出も除外もできるようになります。
Cookie を発行したりカスタムタグを入れたりと忙しいですが、柔軟性が高いので一番オススメです。成果を見越してしっかり解析するなら、GA4 と Clarity を組み合わせて使う必要があるため、GTMの導入は必須になります。最低限、このくらいの知識は必要です。Cookie の発行はともかく、複雑なことはしていないのでがんばりましょう(/・ω・)/
残る方法は、難しくはないけれど(正直)メンドクサイです。GTMを使えるようになったほうが、将来性ありますよ。
utm パラメータをつけて判別する
「どこから来たのか」の情報によってフィルタリングして除外する方法です。広告を GA4 で効果測定している方なら、「utm パラメータ」にピンと来る方もいらっしゃるかもしれません。
メリット
- 実装は比較的カンタン
- システムにログインしなくても対象にできる
- スマートフォンからのアクセスにも対応できる
デメリット
- URLを共有する際に毎回手間がかかる
- お気に入りのURLを周知する必要がある
- パラメータがなければ一般ユーザーに紛れてしまう
Clarity のトラフィックカテゴリーには、「選択範囲を除外する」として一部のデータを除外できるフィルターが多いです。ここにある「ソース」は utm_source
(utm パラメータのキャンペーンソース)が使えるため、社内向けメディアのウェブサイトや社員向けのお気に入りURLなどを設定して、除外設定を活かそうという考え方です。
今回は、「自社のウェブサイトにお知らせを掲載し、営業部の写真向けに Microsoft Teams で共有したい場合」を想定します。「あれ?関係者を除外したいんだけど??」と思った方、設定は同じなので以下に進んでみてください。
今回は、以下のようにしました。utm_campaign
も使えるので、部署ごとに設定するなどして使うことができます。今回は営業部向けにしてあります。
- utm_source(ソース):Teams(Slack とか Discord などもイケます )
- utm_medium(メディア):referral(
referral
固定) - utm_campaign(キャンペーン名):for_sales(なんでもOK)
たとえば https://example.com/archive/96631073/
を共有したい場合は、以下のようなURLにして使用します。
https://example.com/archive/96631073/?utm_source=teams&utm_medium=refferal&utm_campaign=for_sales
長くてわかりにくくて間違えそう!と思いますよね。Campaing URL Buider を使うと便利です。英語ですが難しいことはないので慣れましょう。
URLを共有できたら、次の日に確認してみましょう。フィルターからソースを選んだ際に、設定したソース名が入っていればOKです。抽出も除外も思いのままです。
*弊社サイトを例に試してみた
以下のURLをSlack に貼り付けて、スマホから4Gでアクセスしてみました。
- URL:https://coaching.kosgis.com/column/category/strengthsfinders-talent/
- utm_source(ソース):Slack
- utm_medium(メディア):referral
- utm_campaign(キャンペーン名):family
https://coaching.kosgis.com/column/category/strengthsfinders-talent/?utm_source=slack&utm_medium=refferal&utm_campaign=family
次の日にフィルターを確認したところ、しっかり取得できていました!
以上が utm パラメータをつけた除外方法です。自分がアクセスする際には、パラメータをつけたURLをお気に入りに入れておくと使いやすいかもしれません。ただし、パラメータに左右されるため、使用する際には定義して管理しておきましょう。
関係者除外方法のまとめ
長くなったので、簡単にまとめるとこうなります。
方法 | メリット | デメリット | 結論 |
---|---|---|---|
IPブロック | カンタン | 柔軟性がない | 個人・初心者向け |
ログイン除外 | CMSとの親和性が高い | GTMの知識が必要 | WordPress 管理者向け |
カスタムタグ | 柔軟性が高い | ウェブの知識が必要 | しっかり解析するならコレ |
パラメータ付与 | 開発不要 | URLの管理が必要 | 折衷案 |
帯に短しなんとやら……ですが、カスタムタグを使う方法が一番おすすめです。横文字に慣れてしまえば作業そのものはシンプルですし、今後のアクセス解析に欠かせないので、この機会に挑戦してみてください。
また、関係者の除外は不要なデータを含めないことが目的なので、関係者のアクセスが少ないのなら、こだわりすぎなくても問題ありません。ただし、コンバージョンのテストなどは気をつけてください。
関係者除外に関するQ&A
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