はい、ごめんください。Microsoft Clarity(クラリティ)大好きコスギです。
この記事は Ihab Rizk さんによって書かれた Microsoft 社の公式記事「Bot Activity in Microsoft Clarity: New Ways to Measure and Analyze Bot Traffic」を和訳しつつ、私の考えなども入れたものです(和訳公開の許可を得ています)。ノイズなく読みたい方は以下からどうぞ。

以下に、要点を3行で。
- Bot Activity が「見えるだけ」から「分析できる」段階へ進化、規模・質・傾向を数値で把握できるようになった
- リクエストの成功・失敗や robots.txt 違反まで見える化され、ムダなクロールやアクセス不能ページを見つけやすくなった
- CDN対応が拡大し、Cloudflare は無料プランでも利用可能に

Microsoft Clarity に Bot Activity(ボットアクティビティ)を導入した際、私たちはこれまでインフラのログの中に埋もれていて、アクセス解析の文脈では解釈しづらかったウェブ流入の一部に、初めて光を当てました。Clarity の中で、AIシステムやクローラー、自動化されたエージェントがどのようにコンテンツへアクセスしているか、どのプラットフォームが関わっているか、どのページがリクエストされているかを、初めて確認できるようになったのです。
この可視化は、大きな転換点でした。ボットの活動は、もう背後に隠れたものではなく、観察し、掘り下げられる対象になったのです。
しかし、見えるようになることは、あくまでスタートラインに過ぎません。
この活動が見えるようになると、自然と次の疑問が出てきます。このトラフィックは、サイト全体の活動と比べてどれくらい重要なのか。このボットの活動は、有益なものなのか、それとも単にコストがかかっているだけなのか。この挙動は、時間とともにどう変化しているのか。
これらの問いに答えるには、生のリクエストデータだけでなく、構造や集計、そしてより深く分析するための仕組みが必要です。
今回のアップデートにより、Microsoft Clarity の AI Bot Activity は、単なる「見える化」から、さらに踏み込んだ「分析」の段階へと広がります。Bot Analytics ダッシュボードに、より充実した指標、わかりやすいシグナル、そしてチームがボットのトラフィックをよりよく理解するための新機能が追加されました。
このアップデートは、3つの主要な機能に焦点を当てています。
コスギ注
以前、AI Bot Activity 登場時の和訳記事と、使い方をまとめた記事を書きました。あのときは「AIボットのアクセスが、ようやく見えるようになった」という話で、Microsoft 自身も「これは始まりに過ぎない」と締めていたんですよね。
今回はその続編で、「見えるようになったその先、どう分析に活かすか」という話です。順当な進化ですし、個人的には「やっぱりここまでやるよな」という感想です。
ただ、中小企業のウェブ担当者目線だと、正直「ボットの動きを分析する」というフェーズまで手が回っている会社はまだ少ないと思います。なので、この記事では「とりあえずどこを見れば、何がわかるのか」を中心に噛み砕いていきますね。
AIボット活動の「規模」を把握する
ボットのトラフィックに関する最初の課題は、単純に「どれくらいの規模なのか」を把握することです。自動化されたシステムがサイトにアクセスしていること自体は見えても、それが全体の中でどれくらい重要なのかを答えるのは、案外難しいものです。
新しい Bot Analytics では、以下が確認できるようになりました。
- AIボットリクエスト数(合計) AIクローラーや自動化システムによるリクエストの絶対数
- AIボットトラフィックの割合(%) 全体の流入のうち、自動化された活動がどれくらいの割合を占めているか
- クロール済みページの割合(%) サイト内のページのうち、ボットにアクセスされている割合
- 全リクエストの概要 ボットの活動を、サイト全体のトラフィックと並べて確認できる統合ビュー
- トラフィックの種類をまたいだ指標の一貫性 選択したトラフィックの範囲(全体/全ボット/AIボット)に応じて、情報カードの定義と数値が自動で切り替わるため、どの範囲を見ているのか迷わなくなった
これらの指標が組み合わさることで、ボットの活動は「個別の観察結果の集まり」から「計測可能なサイト需要のレイヤー」へと変わります。ボットが存在することを知るだけでなく、その規模・集中度・流入全体に対する相対的な重みまで理解できるようになるのです。規模を把握することで、AIシステムが実際にあなたのコンテンツとどれくらい関わっているのか、そしてその需要がどこに集中しているのかがわかります。これは、AI主導の発見において見つけられやすさ(discoverability)を高めるために、どこに優先的に投資すべきかを示す明確なシグナルになります。
コスギ注
地方の小規模企業だと月間1万セッションもいかないケースは多いので、「AIボットが流入している割合」なんて、最初は数%くらいでピンとこないと思います。でも、これは「率」より「推移」で見るのが大事かなと。先月3%だったのが今月8%になっていたら、それは無視できない変化ですよね。
「クロール済みページの割合」も地味に良い指標だと思っていて。これが低いままなら、そもそもAIに見つけられていない可能性が高いので、内部リンクやサイトマップを見直すきっかけになります。
クラリティだけで時系列の推移を細かく追うのはちょっと不便なので、定期的にウォッチしたいなら、毎月スクリーンショットを残しておくか、エクスポートしてスプレッドシートに貯めていくのが現実的だと思います。まあそろそろGA4も実装してくるんじゃないかと思いますが……もうされてる??
ボットとのやり取りの「質」を評価する
ボットのトラフィックは、すべてが同じように振る舞うわけではありません。あるリクエストは意図どおりにコンテンツへ正常に届きますが、別のリクエストはリダイレクトされたり、ブロックされたり、インフラやルーティングの都合で失敗したりします。この違いを理解することは、自動化されたアクセスが効率的に機能しているのか、それとも不要な負荷を生んでいるだけなのかを見極めるカギになります。
強化された Bot Analytics ダッシュボードでは、以下が分析できるようになりました。
- リクエストステータスの内訳
ボットのリクエストが、成功・リダイレクト・失敗にどう分布しているかを確認できる - リクエストステータスの時系列トレンド
ボットのトラフィックの信頼性や結果が、時間とともにどう変化しているかを追える - ステータス別のインタラクティブフィルタリング
特定のリクエスト結果をクリックして絞り込み、パターンをさらに調査できる - CDN違反の検出
robots.txt に違反して、アクセス禁止のパスにアクセスしているボットを検出し、トレンドの追跡やフィルタリングで問題のあるクローラーを特定できる
これらのシグナルがあれば、単なるリクエスト量の話から、運用上の明確さへと一歩進めます。「ボットが来ている」とわかるだけでなく、そのアクセスが効率的かつ成功しているのか、それとも失敗や非効率なリクエストによって不要なインフラ負荷を生んでいる可能性があるのかまで理解できるようになるのです。
失敗したリクエストの数が多い場合、それはAIシステムがあなたのコンテンツに正しくアクセスできていないことを示しているかもしれません。アクセスがブロックされている、URLが壊れている、ページが制限されているなど、理由はさまざまです。これは、AIが生成する回答の中で発見されたり言及されたりする機会を逃していることにつながります。これを避けるには、ページがボットにアクセス可能で、エラーや壊れたリンクがなく、確実に素早くクロール・読み込みできる状態になっていることを確認しましょう。
コスギ注
個人的に、今回のアップデートで一番「現場で使える」と思ったのはこのセクションです。「robots.txt 違反の検出」とか、地味だけど中小企業のサイトほど見落としがちなところですよね(解説した記事をこのあとに書きます)。
WordPress などのCMSを使っていると、全部管理されていることが多いのですが、たとえば、リニューアルのたびに robots.txt を更新し忘れて、本来見せたいページがブロックされたまま……みたいなことは、まれによくあります。Bot Activity で「失敗が多いな」と気づければ、サチコ(Google Search Console)の「ページのインデックス登録」も合わせて見て、原因を特定しやすくなると思います。
逆に「失敗してるけど別にいいや」というページもあると思うんです。管理画面用のパスとか、そもそもAIに見つかってほしくない場所とか。そこは焦って全部直そうとせず、「見せたいページが失敗していないか」だけチェックすれば十分ですね。
パターンと機会を特定する
規模と質を理解したら、次のステップはパターンを見抜くことです。ボットの活動がどこに集中しているのか、時間とともにどう変化しているのか、サイトのどの部分が継続的に自動化された注目を集めているのか、ということです。
今回の Bot Activity の機能強化により、以下が可能になりました。
- すべての主要指標のトレンドを分析
リクエスト数、割合、クロールカバレッジなどの時系列での変化を含む - ドメイン単位・パス単位でのフィルタリング
サイトの特定の領域を切り出して、ローカルな挙動を把握できる - クリックでのドリルダウン調査
ダッシュボードを離れずに、リクエストステータスやパス単位の活動をすぐに掘り下げられる - パスレベルでのリクエストパターン追跡
どのページやリソースが継続的にボットの注目を集めているかを特定できる
これらの機能が組み合わさることで、これまで大量のシグナルの一本の流れとしてしか見えていなかったボットの活動から、意味のある構造を浮かび上がらせることができます。ボットの活動を単一のリクエストの流れとして見るのではなく、パターンとして分解できるようになるのです。実務的には、AIシステムがどこに注目しているのかを的確に把握し、その領域をコンテンツの改善や最適化の優先対象にすることができます。関心の高いページやトピックに重点的に取り組むことで、AIの回答内であなたのブランドがどう取り上げられるかを改善できます。このトレンドラインを使えば、コンテンツの更新やページの再構成、アクセシビリティの改善が、実際にクロールのカバレッジ向上(注:検索エンジンなどに認識されるページを増やすこと)につながったかどうかを、時間をかけて検証できます。
コスギ注
「パス単位でのフィルタリング」は、ブログ記事が複数あるサイトなら特に刺さる機能だと思います。「このシリーズの記事だけ、AIにどれくらい読まれてるんだろう?」みたいな確認ができるようになるので。
とはいえ「クロールが増えた=成果」と短絡的に喜ぶのは早いです。前のセクションの話と合わせて、「クロールは増えたけど失敗も増えてないか」「流入やコンバージョンにつながっているか」もセットで見ていきたいですね。
この3点(規模・質・パターン)はセットで初めて意味を持つ、という構成になっているのが、今回のアップデートのポイントだと思います。
Bot Activity の新機能を一覧で見る
Bot Activity ダッシュボードで利用できる主な指標と機能を、まとめてチェックしておきましょう。
新しい指標と全体傾向の把握
- AIボットリクエスト数(AIクローラー・自動化システムからのリクエストの総数)
- AIボットトラフィックの割合(サイト全体のリクエスト量に対する%)
- クロール済みページの割合(ボットにアクセスされた全ページに対する%)
- 統合的な活動トラッキングのための全リクエスト概要
リクエストステータスの可視化
- ボットのリクエストをステータス(成功・リダイレクト・失敗)別に内訳表示
- リクエストステータスと主要指標カードにトレンドラインを追加
- リクエストステータスからクリックでフィルタリングし、さらに深く分析
探索・フィルタリング機能の拡充
- すべての Bot Analytics ビューでドメイン単位・パス単位のフィルタリングに対応
- パス別リクエストやリクエストステータスでのクリックフィルタリングに対応
- ダッシュボードのテーブルや指標カードの操作性が向上
コンテンツタイプとテーブル表示の改善
- コンテンツタイプ別のリクエスト分布を集計する新しいカードを追加
- パス別リクエストのテーブルからコンテンツタイプの表示を削除し、構造をシンプルに
- パス別リクエストのビューを再設計し、集計方法や表示の一貫性を改善
対応CDNの拡大
- Akamai・Azure Front Door(AFD)との新しい連携に対応
- Cloudflare の非エンタープライズ向けプラン(無料・Pro・Business)にも対応
コスギ注
中小企業目線で一番うれしいのは、最後の「対応CDNの拡大」だと思います。これまで Bot Activity は CDN との連携が前提だったので、CDNをガッツリ契約していない小規模サイトだと「自分には関係ない機能」になりがちでした。
Cloudflare の無料プランまで対応したのは大きいですね。Cloudflare の無料プランはすでに使っているサイトも多いと思うので、「設定を見直すだけで使えるようになる人」が一気に増えたはずです。検証して欲しい。
とはいえ、WordPress プラグイン経由で使えている人は、そもそもCDN連携を意識しなくていいので、急いでCDNを契約する必要はありません。この記事が出たあたりで、一時的に使えなくなっていたこともありましたが、問題なさそうです。時々寝てしまうのがクラリティさんのお茶目なところ。
利用を開始するには
AI Bot Activity は、現在 Microsoft Clarity のダッシュボード → AIの可視性(AI Visibility) → AI Bot Activityから利用できます。
プロジェクトの管理者は、プロジェクト設定のAI Visibilityセクションから対応する CDN を接続することで、この機能を有効にできます。セルフサーブのオンボーディング画面では、現在対応しているCDNプロバイダーと、今後対応予定のものが表示されます。
対応CDNは、Fastly、Amazon CloudFront、Cloudflare、Azure Front Door、Akamai です。
最新版の Microsoft Clarity プラグインを利用している WordPress サイトでは、AI Bot Activity は自動的に利用できるようになります。古いバージョンの Clarity プラグインを使っているサイトは、機能を利用するためにアップデートが必要です。
コスギ注
WordPress + Clarityプラグイン勢は、まずプラグインのバージョンを確認するところから始めましょう。管理画面の「プラグイン」一覧から、Clarity の更新があるかをチェックすればOKです。
CDNを使う場合の費用感については、公式ドキュメント(英語)にまとまっています。WordPressプラグインのみで使う場合は無料ですが、CDN経由だと有料になることが多いので、すでにCDNを契約している人以外は、まずはプラグインだけで様子を見るのがいいと思います。
使い方の基本は前回の記事でまとめているので、まだ読んでいない方はこちらもどうぞ。

余談:「見える」の次は「比べる」
前回の記事を書いたとき、Microsoft は「これは始まりに過ぎない」と言っていて、私も「じゃあ次は何が来るんでしょうね」と書いた記憶があります。今回のアップデートを見て、「ああ、こういう順番で来るのか」と妙に納得しました。
アクセス解析の歴史を振り返ると、だいたい同じ順番で成熟していくんですよね。まず「見える」(存在を知る)。次に「測れる」(数を数える)。そして「比べる」(規模・質・推移で評価する)。最後に「動かす」(施策に反映する)。今回のアップデートは、ちょうど「測れる」から「比べる」への移行だと思います。
正直なところ、1か月のアクセス数が5万件とかでなければ、ボットの「質」や「パターン」まで毎週ウォッチする余裕がある会社は、まだ多くないと思います。GA4とサーチコンソールを定期的に見るだけで手一杯、というのが現実的なところでしょう。そもそも、ウェブサイトのデータを見る前にビジネスモデルを見直して、選択と集中をしたほうがいいケースがほとんどではないでしょうか。
ただ、「いつか見るかもしれないものが、ちゃんと記録され始めている」という事実は、知っておいて損はないと思うんです。今は見なくても、半年後・1年後に「AI経由の流入が増えてきたな」と感じたとき、過去にさかのぼって「あのときからクロールが増えていたんだ」と確認できる状態を、今のうちに作っておけるかどうかは、結構大きな差になる気がします。
とりあえず今は、ダッシュボードを一度のぞいてみる。それだけで十分です……Microsoft Clarity が大好きな立場としては。
当然、リスクもあります。「使いもしないユーザーの情報を Microsoft に垂れ流している」と捉えることもできるので。これだけの機能を無料で開放している理由ですね。それは Microsoft Clarity に限らず、GA4も同じです。
こういったリスクを重く見るなら、そもそも使わない。QA Assistant(無料)や QA ZERO(有料・法人向け)のように、自社サイトで完結するツールを使う。やー、投資対効果を考えることからは逃げられませんね。